もらい事故でも賠償責任?(3)

先日、福井地裁で驚きの判決が出て話題となった「もらい事故でも賠償責任?」のニュースをまとめてみた。

もらい事故でも賠償責任?(1) 事故の概要・事故当事者の関係性と事故に至った経緯
もらい事故でも賠償責任?(2) 誰が誰を訴えたのか?
もらい事故でも賠償責任?(3) 任意保険の対応はどうだったのか? ← 今この記事
もらい事故でも賠償責任?(4) 自賠責保険の対応はどうなのか?
もらい事故でも賠償責任?(5) 各原告の主張と請求
もらい事故でも賠償責任?(6) Fさんに過失はあったのか?
もらい事故でも賠償責任?(7) くだされた判決
もらい事故でも賠償責任?(8) 各被告への損害賠償支払い命令
もらい事故でも賠償責任?(9) 一番かわいそうなのはAさん

任意保険の対応はどうだったのか?

今回のような事故の場合、任意保険ではおおよそ以下のような対応になる。

対向車同士の事故の過失割合は、基本的にセンターオーバーした側に100%の過失があると定められています。
(参考:ソニー損保 http://www.sonysonpo.co.jp/auto/kashitsu/ac02/akst103.html

この事故で言えば、G車に100%の過失があるとなる。

過失割合10:0であるから、事故をもらったF車の任意保険からG側に対しては、車の修理費も、怪我・死亡に対する損害賠償金もいっさい支払われない。

逆に、G車の任意保険からF側に対しては、車の修理費全額と、怪我の治療費や損害賠償金が支払われる。

しかし、過失割合10:0となっても、事故を起こした車側にまったく救いがないわけではない。
G車が車両保険に入っていれば、G車の修理費も、G車の車両保険から支払いを受けることができるし、G車が人身傷害補償特約に入っていれば、G車に乗車中に死亡したGさんや、怪我を負ったAさんKさんにも、G車の任意保険から治療費や損害賠償金が支払われるのだ。

これなら何も問題はなく、裁判など起こす必要もないように思われるが・・・。

実はこの事故、不幸にもG車の任意保険には家族限定特約がつけられていたのだ。
そして、G車を運転中に事故をおこしたAさんは、Gさんの家族ではなかったため、G車の任意保険はまったく適用されない、無保険車同様の状態であったのだ。

ちなみに、自動車保険の家族限定特約とは、運転者を家族のみに限定することによって、支払う保険料が安くなる特約なのだが、当然、家族以外の者が運転している時の事故は、担保されない。

そのため、事故をもらってしまったF車は、過失割合ゼロにも関わらず、G車の任意保険からは、車の修理代はおろか、怪我の治療費も支払ってもらうことはできなかったのだ。

そして、G車に同乗していて死亡・怪我を負ったGさんAさんKさんに対しても、まったく何も補償は出ないのである。

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家族限定特約さえつけていなければ、もしくは、家族以外の者が運転さえしなければ、前述したように、G車の任意保険から、F車の修理代やFさんの怪我に対する補償、G車に乗っていて怪我や死亡した人たちへの補償もされていたのに。

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保険がこのような状況であったために、裁判となったのであろう。
任意保険が適用されないのであれば、損害は裁判で取り戻すしかない。

とは言え通常であれば、Fさん及びF車を所有するE社は、G車の運転者であるAさんや、G車の所有者(Gさんは死亡のため、その遺族)に、損害賠償の請求をし、死亡したGさんの遺族は、G車を運転していたAさんに損害賠償請求をするのが一般的であろう。

しかし今回はなぜか、Gさんの遺族であるBCDさんが、事故相手のFさんにも過失があるとして、Fさんをも訴えたのだ。
(厳密に言えばF車の自賠責保険からの支払いを求めて、F車の所有者であり自賠責保険契約者でもあるE社を訴えたのだ。)

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